下呂温泉で有名な岐阜県下呂市。
木曽川水系馬瀬川の岩屋ダム下流約300m、温泉地からもほど近い下呂市金山町に、金山巨石群と呼ばれるところがあります。
巨石群を構成しているうちの「岩屋岩陰遺跡」を含め、これらはダムに沈むのをまぬがれた巨石が、いくつか転がっているだけという所ではなさそうなのです。
あたかもイギリスのストーンヘンジ、エジプトやマヤのピラミッドのように、考古学的・天文学的・人文学的、宗教学的に(そんな大それた知識はありませんが)、興味津々の所なんですよ!
あっごめんなさい。難しい説明はなしで。
目と頭と体を動かすアクティビティのつもりで歩いてみました。
人が住んでいたというだけの遺跡ではない?
このあたりからは、8,000年前(縄文時代)の住居跡や土器・矢じり等が多数見つかっており、岩屋岩陰遺跡は1969年(昭和44年)金山町指定史跡、1973年(昭和48年)岐阜県指定史跡に指定されています。
でも、ただ集落があったというだけの遺跡ではないんです。
金山巨石群は太陽暦の天体観測所として利用されていたと考えられるそうなんですよ。
研究者の調査では、これらの石の配列・構造と太陽の運行との関係により、春分・秋分・夏至・冬至等、特定の日に岩の隙間や頂点に太陽の光がさすことがわかっています。
また、4年に一度のうるう年や、もっと細かい128年に一度の誤差まで知っていた可能性があるとか。
これを驚かないでどうするんですか!
本当なら、エジプトよりもマヤよりも早い、世界的発見ですよ!
エジプトのピラミッドは4,700年前、マヤ歴は2,500年前なので。
観測のし方を体感してみた
私がたまたまここを訪れたのが2022年4月20日午前10時半頃、奇しくも暦の上の「穀雨」。
4月22日頃からはこんな風に見えるそうなのです。
残念、もう少し左に寄らなければいけませんでした。
あとは時刻さえ合わせれば、ちゃんと見えたんでしょうね。
現場で説明板を見て理解するのに結構時間を要します。
先に知っていれば…。
両側の岩の間から光が差し込んで、突き当りの洞の中の石板を照らすようです。(説明板の下の写真)
ちなみに説明版上の写真はこの洞の頭上のものですが、まだ夏至60日前なので、光がさしていません。
冬至・春分・秋分の観測はこちら。他の方法と併せて2重3重に観測できます。
下の説明版は北斗七星やこと座ベガ、白鳥座デネブを観察するもの。
多分この岩ですが、岩に沿って見上げるの、へばりつかなくてはいけないので、けっこう難しいです。
これでもちょっと角度が違うみたい。
わざわざこんな姿勢で観測しなくたって…。向きが違うのかも?
日頃から星は見る方なので、どれがベガかデネブか見分ける自信はありますが、昼間に予測はできませんね。
私たちが時々耳にする暦の上の24節気は中国で考案されたものです。
太陰暦とは別に、1太陽年を分割して作られた、季節の目安を知るための重要なものでした。
金山巨石群で観測できる節目の時期がこの24節気と一致するのは、季節の移り変わりを同じように太陽から読み取っているからでしょう。
2003年(平成15年)には旧金山町により、太陽の軌跡を観察できる「太陽カレンダーシュミレーター再現館」が建てられました。
時期によって太陽光がどう当たるか、が詳しく説明されています。
巨石ロマン
巨石群や巨石建造物で思い浮かぶのはイギリスのストーンヘンジ、イースター島のモアイ、エジプトやマヤのピラミッドですね。
ストーンヘンジやピラミッドも天文学や暦学の役割を持っていたとか、祭祀の場であった等色々な説があります。
モアイも祭祀説が有力といわれています。
岩がどこか別の所から運ばれてきたというのも共通していますね。
ここ金山でも、大きい岩は9~10m、7,000年前の火山の噴火によってできた濃飛流紋岩というもので、別の場所から運ばれた可能性があるそうなんですよ。
そして、人工的に配置された痕跡があると。
イースター島のモアイも実験の結果、運ぶのが可能であったとわかっていますし、ピラミッドさえもその建設が人力+道具で可能だったとされています。
ここ金山でも遠い昔縄文人が、天体観測のために国家プロジェクト(?)として作ったのかもしれませんよ。
宗教的にもドラマチックな太陽
エジプトのアブシンベル神殿やマヤのピラミッドで起こる、感動的なシーンを見たことがあるでしょうか。
アブシンベル神殿では、最奥の最も神聖な「至聖所」に年に2回だけ朝日が差し込み、そこにある4体の神像を照らし出します。
マヤのピラミッドでは、春分と秋分の日の太陽が沈む頃、ピラミッドの階段に当たる光と影が、石造りの蛇神の姿を浮かび上がらせます。
太陽の動きによって、なんと本当に蛇神が降臨したかのように見えるんですよ!
本当に感動的なもので、この日は世界中から観光客が殺到するそうです。いえ、TVで見ただけですけどね。
金山巨石群ではこのような壮大な演出はないのですが、それでも岩の間から光が差し込んだりすると、何だか象徴的な特別な気分になりますよね。
妙見神社の妙見は北辰=北極星
日本の神の概念は、山や川や巨石等、自然への崇拝から始まったものとも言われます。
こちらの巨石にも祠があり、妙見神社となっています。
妙見とは仏教語で、北辰=北極星のことです。
神道の天之御中主神が、神仏習合の影響で妙見菩薩とも言われます。
岩屋岩陰遺跡のふもとの岩から小さな祠のある岩に向かってしゃがみ込み、岩に沿って夜空を見上げると、そこに北極星が見つかるそうです。
そして小さな祠のある岩には、北斗七星を鏡に映したように彫り込まれたカップマークがあります。
これは2010年にドイツの考古学者が発見したのだとか。
4~5月頃不定期に開催される「星空観察会」では、このカップマークに明かりが灯され、北斗七星が浮かび上がるそうです。
ちょっと見てみたいですね。
金山巨石群マップ―歩く前に情報収集をおすすめ
金山巨石群は岩屋岩陰遺跡だけをさすのではありません。
妙見神社の祠のあるのは「岩屋岩陰遺跡巨石群」。
これにその少し東の「線刻石のある巨石群」と山一つ越えた標高約560mの「東の山巨石群」を合わせたものの総称です。
観測ポイントには①~⑫の番号の説明看板があり、そこには便宜上ABC…と岩に記号がふってあります。
ただし一番左手に石段と鳥居があるために、①のポイントを見逃して先に神社に向かう、というのが人の性。
石段の手前の大きな案内板にはABCや①⓶③はありませんので、私のように①に気づかず、右往左往することも。
観測重視の方は、先に①を見つけるか、ガイドをお願いするか、あらかじめガイドブック等に目を通すことをお勧めします。
場所は離れますが、金山町の町中に「金山巨石群リサーチセンター&ギャラリー」がありますので、そちらで情報を仕入れてから向かっても良いかもしれません。
簡単にしたい方は太陽カレンダーシュミレーター再現館にパンフレットが置いてあり、下のマップが載っているので、先に入手がGOOD。
説明版に従って、岩に沿って見上げたりしゃがんだり、山肌の急な階段を昇降しますので、足元と履物に注意。
ほんとにアクティビティ。良い運動になります。
なお、東の山巨石群は山一つ向こうの登山になりますので、ご覚悟を。ガイド付きが良いかと思います。
今回の場合、東の山巨石群には行っていません。
岩屋岩陰遺跡巨石群と線刻石のある巨石群周辺を、歩き回ったり写真を撮ったりして、所要時間約1時間半でした。
イベント・お問い合わせ先
太陽観測会 春夏秋冬年間12回ほど 東の山巨石群登山観察もあり
星空観察会 不定期
光の体験ツァー ガイド+昼食付+飛騨街道「筋骨めぐり」のセット 11:30~16:00 3,000円
金山巨石群ガイド予約・その他お問い合わせは
金山町観光協会 📞080-3637-2201 下呂市金山町大船渡679-1(JR飛騨金山駅)
金山巨石群リサーチセンター&ギャラリー 📞0576-20-4118 下呂市金山町金山2142-4
アクセス
車が便利です。
タクシー JR飛騨金山駅から約20分 下呂駅から約25分
自家用車 岐阜県郡上市から国道256号経由 約40分
愛知県名古屋市内から東海自動車道経由約1時間45分
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