伊勢志摩の石神さんは「女性の願いを必ず一つ叶えてくれる」ということで、全国的に有名ですね。
このキャッチコピーにはちょっと切ないロマンチックな響きがあって、筆者も昔、惹かれました。
それで「必ず一つ」「一つだけ」なら、あだやおろそかには願掛けできないぞと、保ちの良いお願いをしたのです。
それは今叶っていて、有難いことです。
ただ時代と共に解釈が変化するのか、今どきは一つ叶った後もリセットできるという説があるらしくて、筆者などひっくり返りそうになります。
言い換えればそれだけ願いが叶っているとも言えるんでしょうか。
まあ、たくさん願いが叶って幸せがいっぱいなら、それも良いかも。
それにしても、何度もリセットできるのも保ちの良いお願いをするのも、どちらもあまりロマンチックとは言えないか(笑)。
伊勢志摩にある3か所の石神さんを、駐車場事情と一緒にご紹介しましょう。
ロマンチックなのは相差の石神さんですが
約10年前に筆者がお願いしたのは、鳥羽市相差の神明神社にある石神さんです。
当時はこちらの石神さんしか知りませんでした。
鳥居からすぐの新しめの社殿が目立つので、つい先にお参りしそうになりますが、一番奥の神明神社の本殿を先にお参りしてください。
神明神社の主祭神は伊勢神宮の内宮と同じ天照大神なんです。
最初にご挨拶に行くのは内宮と同じ作法なんですね。
まずは神明神社を参拝しましょう
神明神社は、天照大神を主祭神として伊弉諾命・伊弉冉命・素戔嗚命等、現在は26柱の神々をお祀りしています。
長い時代を経て、地域の神々を合祀していったものです。
そもそもの神明神社は古記録では推古天皇元年(593年)11月11日の創建とあるそうです。
伺ったのは2022年10月29日ですが、茅の輪くぐりの茅の輪が設置されていました。
茅の輪くぐりは普通、6月30日の夏越しの祓や大みそかの大祓などに行なわれますが、未曽有の疫病流行や災害の起こった時などにも臨時で行われるそうです。
昨今のコロナ禍はまさにぴったり。こちらもご利益がありますように。
他にも紙で作った人形に体の悪い所を移して納め、祓っていただくことができます。
隣に立つのは朝福寺薬師堂で、神仏習合の名残ですね。
平安時代後期の十一面観音と薬師如来像が見られます。
古来の「石」がご神体なので「石神さん」
さて石神さん(石神社)ですが、こちらの創建は不明です。
そもそもは古来の自然崇拝から始まったのではないかと思われます。
日本の神道は山や海など自然の威力に神霊を見出して、大木や岩などを依り代に、丁寧にお祀りすることから始まっていますので。
新しめの社殿はご神体の石がよく見えますが、以前伺った時は見えなかったような記憶です。
社殿が建てられたのがはっきりわかるのは慶長14年(1609年)だそうですが、その昔は現在の弘道小学校の傍にあったのだそうです。
現在の位置に移設されたのは平成14年(2002年)。
ご祭神は玉依姫とされており、海神綿津見命の娘・神武天皇の母です。
ある正月の晩に女神が石神さんの元に現れたという言い伝えを、相差の海女さん達が古くから信仰し、海に潜る際の安全大漁を祈願してきました。
そのことから「女性の願いを一つだけ必ず叶えてくれる」と言われるようになり、良縁を願う多くの女性が参拝するようになったそうです。
いわれを知るとなかなか切ない
かつては磯着に「セーマン・ドーマン」という魔よけの印を描いて、海に潜ったのだそうです。
海にいるのは危険な生物や船幽霊、妖怪・魔物たちでした。
セーマンは平安時代の陰陽師、阿部清明の五芒星マーク、ドーマンは清明のライバル蘆屋道満の九字紋に由来すると言われています。
五芒星は一筆書きで元の位置に戻り始めも終わりもないことから魔物の入り込む隙がなく、あるいは元の位置に戻ることから、「無事に戻って来られるよう」祈りを込めたものであると言い伝えられています。
九字紋は、修験道の除災戦勝等を祈る九字作法と同じ形を描くもので、海女さんの間では、たくさんの格子の目で魔物を見張るとも伝えられています。
昔は命と暮らしを守ることで精いっぱいであったかもしれません。
今よりずっと制約も多くて、叶わぬことも多かったのだろうなと思ったりもしました。
「女性の願いを…」というキャッチコピーにぐっと来るのは、私だけではない筈。
こちらで頂けるお守りは麻袋を磯着にみたて、石神さんの文字とセーマンドーマンが、貝から採った「貝紫」という染料で描かれたものです。
最近ではストラップ型の、小さな真珠付きのお守りも人気だそうです。
本物のアコヤ真珠なのでそちらも素敵なんですよ。
他にも、お願いを書く用紙がピンクだったり、手水舎が花手水にしてあったりと、女性の好むしつらえになっています。
ちょこちょこ願いで何度もリセットというのも明るくて良いですが、遠方の場合そう何度もお願いに来られません。
結婚が叶っても、人生はそこがゴールではないですし。
せっかく「必ず」叶えてくださるなら、やっぱり保ちの良いお願いをおすすめしますね。
これこそ文字通りの老婆心‼
駐車場はナビで「相差 神明神社」「相差 石神さん」「石神さん駐車場」で反映するようです。
小さい駐車場ですが、整理・誘導の係の方が何人かいらっしゃいました。
人気のスポットですからね。
上之郷の石神さん―古の岩座かな
内宮の別宮である伊雑宮の裏山にあり、伊雑宮正殿の真裏に位置します。
山へ入ってすぐ、一見何もなさそうな林の道端に、鳥居がありました。
鳥居の前に立って見ると、谷に降りる道があり、その先にはいくつかの石が見えました。
社殿はなく、まさしく石の神様です。とってもシンプル。
こちらは岩座といった感じですね。
入れないようになっている、奥の山の中にも巨岩があるそうです。
立札によるとこのあたりの産土神だったとか。
山中でもこの付近は余分な木がなく、きちんと整備されている感じです。
お神酒の瓶子が置かれ、簡素な屋根付きの賽銭箱もあります。
落ち葉が降り積もっていますが、ちゃんと手入れがされていて、荒れた感じはありません。
むしろ良い気を感じましたよ。
すぐ隣に旧村社であった「谷社」の跡が残っており、そちらも今は建物はなく、花壇が作ってある程度です。
谷社についての詳しいことはわかりません。
「上之郷石神」はナビには反映されないようなので、「伊雑宮」の石垣の外にある散策マップで位置を確認してください。
伊雑宮の無料駐車場に車を置いて徒歩で行けますし、その方が周辺の遺跡もゆっくり見られます。
横山石神神社は男性の願いもOK
横山展望台近くの横山石神神社です。
言い伝えでは創建が平安時代後期の天永元年(1110年)だそうです。
ご祭神は天永龍王大明神という、元号と同じ名前の龍神様。
他にも国常立命・少彦名命・倭姫命など、計8柱の神様が祀られています。
神仏習合の盛んな時代に修験道の開山にあたって寺院と共に創建され、志摩地方一円の崇敬を集めて隆盛を極めたそうですが、寺院が移転し神社だけ残ったのだとか。
古来、男女の別にかかわらず、一生に一事は必ず願いをかなえてくださるそうです。
伊勢志摩の真珠養殖で有名な御木本幸吉も、こちらで願掛けをしたということですよ。
立派な由緒と長い歴史があり、霊験あらたかなのです。
白い願掛け石に「心願成就」「病気平癒」「結婚成就」などの願い事が朱書きされていて、参拝客は自分の願いにあった石を持ち帰ると良いそうです(有料)。
2年経ったら郵送でも良いので、お返ししてください。
参拝時間が決められているので注意
こちらの神社は参拝時間が決められていて、2022年11月現在10:00~14:00までなので、注意が必要です。
この時間以外は大鳥居から中に入れないので、大鳥居の位置から遥拝してくださいとのことです。
筆者も何度か訪れているのですが、年々閉まるのが早くなっていて、今回はがんばって午前中に伺ったため、やっと参拝できたという状況です。
参拝は本殿の前まで進めますが、写真撮影は一定の位置からしか許されません。
神社ですがいろいろと、個性的。
御朱印や願掛け石などを希望される場合は、あらかじめ電話でお願いしておくことをおすすめします。
開いていれば、鳥居をくぐって坂を下りた所に駐車場があります。
横山ビジターセンターの駐車場から歩いてもOK。
横山展望台ができて神社のたたずまいが変わったのか
横山展望台ができる前は、参道が今とは違うルートで通っていたようにお見受けします。
横山展望台の北側駐車場前にちょっと下る道があり、今も辻に小さめの社標が立っているからです。
筆者は、かつてこちらが表参道だったのではないかとの推測をしていました。
この道は今はつながっておらず、横山展望台へ通じる今風の立派な道に寸断されたようなかっこうになっていますが、元々神社の土地ではなかったそう。
現在の神社のたたずまいについても、思うことが多々ありますが。
このいきさつは別記事で詳しく書いていますので、伊勢志摩の横山石神神社に驚いたをどうぞ。
3大石神さんまとめ
古から伊勢志摩に伝わる、3大石神さんを訪ねてみました。
人気なのはやはり相差の神明神社の石神さんです。
「女性の願いを必ず一つ叶えてくださる」とは、相差の石神さんならではのキャッチコピーと言えると思います。
若い女性が多いのはもちろんですが、私のようなシニアも大丈夫です。
シニアのご夫婦連れも、シニアのグループも何組かお見掛けしました。
上之郷は神社の原点のようなたたずまいでしたし、横山もかつては志摩一円から崇敬され隆盛を極めた、神仏習合の神社でした。
横山石神神社は男女の別なく、一生に一事を必ず叶えて下さるそうです。
3大石神さんとも、それぞれの地域の産土神であったり、氏神さんであったりします。
いずれも長年の崇敬を受けてきた、霊験あらたかな石神さんでした。
皆さんの願いも叶いますように。
コメント