岐阜県高山市にある名勝、宇津江四十八滝では、飛騨高山の市街から車で約30分という近さで、急峻な渓谷に大小さまざまな美しい滝が見られます。
全国の「〇〇四十八滝」は、実際に48筋の滝がなくても「多くある」意味で四十八と付けられていることがありますよね。
ここ宇津江でも実際にあるのは13筋の滝ですが、実は名づけの理由がもう一つ。
昔からある伝説から名づけられたとのことです。
13筋の滝を、少ないと思うなかれ、筆者は歩いてみて充分多いと思いましたよ。
四季を通して美しい風景が見られますが、今回は筆者が訪れた紅葉の時期の様子をご紹介しましょう。
紅葉の見ごろは例年10月中旬~11月上旬です。
筆者が訪れたのは2023年11月1日。滝も紅葉も多彩!楽しみ方も多彩でした!
宇津江四十八滝とは
宇津江四十八滝の源流は、高山市街も流れる宮川の支流、宇津江川上流にあります。
四十八滝高原を経て、そこから段々に瀑布を作って流れ落ちているのです。
滝の水は宮川に合流し、やがて富山との県境で神通川となって富山湾に注ぎます。
この一帯は広い県立自然公園になっており、来る時に通過した温泉施設「遊湯館」から一番奥の四十八滝までの間に、散策コースや山野草花園、キャンプ場などがあります。
宇津江四十八滝は「21世紀に残したい日本の自然100選」や「岐阜の名水50選」「飛騨・美濃紅葉33選」にも選ばれているんです。
春から初夏にかけては15万本のクリンソウの群生や2万本のササユリ、5千本のアジサイや新緑の中の森林浴などが楽しめ、秋の紅葉シーズンには見事な紅葉を求めて、多くの人々が訪れます。
厳冬期には凍った滝も見られるそうですよ。
最初の滝「魚返滝」から頂上の滝「上平滝」まで標高差約140m、ゆっくり歩いて片道1時間から1時間半です。
滝に至るまで、駐車場など
駐車場は総合案内所前と、道の左側に2か所、終点レストハウスいぶき前にも7~8台は停められます。
トイレは総合案内所横か、レストハウスいぶきで利用できます。
案内所前に駐車したので、林間広場やキャンプ場を右に見ながら道を上って行きました。
キャンプができるのは夏の間だけだそうですが、良い感じに紅葉してますね。
滝まではまだまだ距離がありますので、山全体の紅葉も楽しんで行きましょう。
レストハウス前に着きました。
左奥にあるのがレストハウスの建物と、バス専用の駐車場です。
自家用車は右に停めてください。
正面に見えるのが滝めぐりの出発点です。
無料の杖が置いてあるのでお借りすると楽ですよ。
清掃協力金200円(小人100円)を納めて、いよいよ滝めぐりのスタートです。
お金を入れる箱の所に置いてあるパンフレットをもらうか、登り口の案内板で、滝の順番や名前がわかります。
滝を踏破するならしっかりした靴がおすすめ
手すりや階段、石畳などで整備されて歩きやすくはなっています。
それに筆者が訪れた朝は、職員の方がブロワーで山道の落ち葉を吹き飛ばしておられ、滑りにくくされていました。
ありがたい、ありがたい。
けれどもともと急峻な谷筋なので、靴はスニーカーか、足首のしっかりしたトレッキングシューズなどがおすすめです。
何しろ山ですもんね。
木の根もあるし、階段の岩も完全に平らではないのです。
中盤以降は階段も急になって次第に段の高さ(蹴上げ)が増し、筆者のひざ下の寸法と変わらないのではと思うほどになって、登るのが大変になりました。
筆者は身長が高くないので、足も短い…のです。
それでもシニアの方々が意外にスイスイと登って行かれることもあり、これは日頃の鍛錬なんでしょうね。
ねじ栗とよそ八伝説
登り口からしばらく後、左のあずま屋にねじ栗が見えて来ます。
かつては滝の上の高原に生えていたもので、樹齢1,300年以上と言われます。
倒木しそうとのことで30年ほど前に伐採され、伐採前の写真と共にここに移されました。
よくまあこんなにねじれたこと!
栗の木がこんな大木になるのは珍しいのだそうです。ねじれるのも。
これは伝説の大蛇が巻き付いていたものだとされています。
よそ八伝説 昔、この里に住むよそ八という若者が、病気の母親のためにイワナを釣りに出かけた。 なかなか釣れないため、どんどん奥へ分け入り、山奥の大沼まで来てしまった。 そこでは面白いほどイワナが釣れたが、気がつくと沼の縁の栗の木に大蛇が巻き付いていて、らんらんと光る眼でこちらを見ていた。 よそ八はその妖気に打たれ、家に戻ると寝込んでしまった。 その夜旅の娘が訪れ、しばらく看病をしてくれたおかげでよそ八は元気になる。 娘は「自分は大沼の大蛇で、二千年の修行を終えて天に昇る日が来た。でもよそ八の親孝行に打たれ自分の血で看病したため、天に昇る力がなくなってしまった」と言い、姿を消してしまった。 話を聞いた偉い行者が不動明王に祈念をしたところ、満願の日に突然雷雨となり嵐が起こって大蛇は龍となって天に昇った。 翌日大沼はなくなっており、渓は岩肌がむき出しになって、キラキラ輝く大小数十段の滝ができていた。 後年諸国修行で立ち寄った弘法大師空海は、「その行者は不動明王の化身で、よそ八(四十八)は仏法四十八願を意味するものであろう」と言われ、このことから四十八滝と呼ばれることになった。
ねじ栗のすぐ横に弁財天の原型と呼ばれる「辨財天専女御饌津神」(右)が祀られています。
弁財天は元々はインドの川の神なので、水辺に祀られることが多いですね。
音楽・延寿・財宝などを司る女神です。
左側の祠は子安観音・薬師如来・大日如来が祀られています。
多彩な紅葉が見られるのは、様々な木が生い茂っているからこそなんですね。
上の写真の正面右側の桂の木には、何種類もの木が宿り木として生えているそうです。
個性的な滝が色々、紅葉の色も多彩
道案内の標識が立っているので表示に従って登って行きます。
最初は流れを右に渡ったり左に渡ったりです。
そのせいか、ここまでにも岩がゴロゴロあるためか、魚返滝はうっかりすると気がつかないのですよ!
流れを渡ったら振り返ってみて下さい!そこに標識がありますから。
魚返滝(うおがえりたき)…標識を見落としがちです
ここより上には魚が登れないほど険しいことから名づけられました。
ここに来るまでにも登れそうもない所がいくつかありましたが、確かにこれほどではありませんでしたね。
やはりこれは滝。
朝霧滝(あさぎりたき)
朝に立ち込める霧が美しく見えることから名づけられたそうです。
別名「岩磨きの滝」。
流れ方を見ると、別名の方がしっくりきますね。
滑らかで美しい滝です。
平滝(ひらたき)
平滝は地形が平たく、滑らかに流れていることから名づけられました。
平滝とその上の函滝が一緒に写る写真を載せるのには理由があります。
函滝(はこたき)…が見えない⁉
平滝を眺めている時には見えている函滝ですが、実はこの滝、標識通り行路を登って行くと、案内通りの姿が見えないうちに、いつの間にか視界から消えてしまうのです!
帰り道に「帰路」の方向に行けば見られるのですが、その時も周りを振り返らないと、見落とします。
なので、往きに回り込んで見ておくか、覚えていて帰りに見るか、ですね。
記事では下から順にご紹介してきたので、ここで挙げておきますね。
この姿は帰路の方に回ったからこそ見られます。
箱から取り出した剣が突き立っているように見えることで名づけられたとのこと。
どこが箱?と思いますよね。
恐らくはこの滝壺が四角なので、そう言っているのではないでしょうか。
上段滝(じょうだんたき)
連続して見えていた三段の滝の最上段なので、上段滝です。別名、夫婦滝。
滝の横に見られるのは不動明王の祠です。
滝と不動明王もよく見る組み合わせですよね。
不動明王は大日如来の化身とも言われ、一切の悪魔を降伏し煩悩を抱える最も救い難い衆生をも、力づくで救うために憤怒の姿をしているそうです。
なぜ滝の傍に祀られるのかというと、不動明王の功徳を説くお経の中に、静寂の山や樹下・搭や廟などで真言を唱えたり、河水に浸って唱えれば願いが叶う、とあるからのようですよ。
梵音滝(きよのきたき)
お経を読む時に拍子をとるキヨノ木の音と滝の音が似ているため、この名がついたとのことです。
キヨノ木とは何か?
木魚の別名でもなさそうだし、拍子木のことかも?と思い調べてみましたが、素人が調べてもはっきりわかりませんでした。
まあ、梵という字は清浄・神聖なものという意味で、きよらかとも読むようです。
さらに「梵音」をきよのきと読むなど、日本語はかなり難しい言語ですよね。
今年の水量が少ないせいか、あまり特別な音はしていません。
大滝(おおたき)
落差18.8mで、宇津江四十八滝では一番の大きな滝です。
見ごたえがあるので、やはり人気があります。
銚子口滝(ちょうしくちたき)
銚子の柄のついた器で、盃にお酒を注いでいるように見えることから名づけられました。
いや、この注ぎ方ではこぼれるでしょ。
さてこの辺から道が急角度になってきました。靴について書いたところの写真はこのあたりです。
お気をつけて。
それと同時に紅葉の色が様々な種類の色になってきました。まさに色々。
木の種類も変わってきているということでしょうか。
赤や黄色だけではないのです。絵に描くとしたら、紫の絵の具も必要かな。
障泥滝(あおりたき)
乗馬の際に鞍の下に垂らす、大型の皮革を障泥と呼ぶのだそうです。
正に字のとおり泥が飛び跳ねて衣服を汚すのを防ぐ、この「あおり」に似て、幅広いことから名づけられました。
展望台
北アルプスが一望できる展望台に着きました。
正面に焼岳、右側が乗鞍連峰で左側が穂高連峰です。
双眼鏡やベンチも置かれ、小休止できるのが有難いですね。
ただ、だんだん混んできて、そんなに広いとは言えないこのスペースに、人が溜まり始めることも。
ここを区切りとして引き返される方もちらほら見えました。
展望台からの帰り道は来た道とは異なり、滝の右岸を通る道になります。
このあたりの道はとても狭いので、往きと帰りの道が分けてあるのでしょう。
盌水滝(わんすいたき)
水流によってできた穴を渦巻いて流れる様子から名づけられました。
13の滝の中では一番小さい滝です。なんと落差1.5m。
瑠璃滝(るりたき)・布晒滝(ぬのさらしたき)・上平滝(うえひらたき)
あと3つの滝が残っています。
滝壺がこもれびを浴びて瑠璃色に見えるため瑠璃滝、真っ白い布を晒したように見える布晒滝、最上流の平らな岩盤の上をすべるように流れる上平滝です。
その上には高原があるそうですよ。
瑠璃色とはどんな色かというと、紫がかった深い青、英語ではラピスラズリにあたります。
この記事のタイトルの所に使った写真の滝壺の色に似ているのかな。
あれは銚子口滝ですけどね。
筆者はせっかく来たのだからもう少し頑張ろうか、でも脚が限界かも…、と考えた末にやめておきました。
残念ですが、ケガや事故を起こしてはもっとダメなので。
下りの方が膝に来ますしね、無事に降りる力も残しておかないと。
帰り道から見る滝は、往きと別角度から見ることもあって、雰囲気が変わります。
足元の安全を確保しながら、帰り道も楽しんでくださいね。
あ、往きに函滝を見られなかった方もお忘れなく。
いろいろな滝があって、全く飽きませんでした。
滝めぐりハイキングを終えたら
紅葉と滝めぐりを楽しんだ後は、疲れた足を休めましょう。
午前中に登り始めた方は、降りてくるとちょうどお昼時かもしれませんね。
レストハウスしぶき
滝めぐりの登り口にあった、シンプルなレストハウスです。
地元の食材を活かした軽食がいただける食事処やお土産コーナーがあります。
珍しい、クリンソウやササユリの種が置いてありました。
四十八滝温泉しぶきの湯 遊湯館
自然公園の入り口にある「遊湯館」では、露天風呂完備の温泉に加え、サウナ・岩盤浴・リラクゼーションなどを利用できます。
こちらにも地元の特産品が置いてあり、お食事処「滝」では、新鮮な食材をぜいたくに使った定食やコース料理も楽しめます。
休館日は毎週木曜日。詳しい情報は公式サイトをご覧ください。
まとめ
豊かな自然に恵まれた宇津江四十八滝では、どことも違う滝と紅葉に出会えました。
大小さまざまな滝や、色とりどりの紅葉、澄んだ空気など、飛騨の大自然の新たな姿を見た思いです。
また、順路に従って進みながら気を付けて見ていくのですが、その仕掛けがまるでアトラクションのようでした。
隠れミッキーでも探すような感じですかね。
季節が変わった景色も見てみたいですね。きっとまた新たな発見があることと思います。
皆さんもぜひ、全身で楽しんで見て下さい。
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