伊勢志摩の天の岩戸を訪れた後、高千穂の天岩戸も見たくなって、2年前に訪れました。
高千穂にはたくさんの神様もいらっしゃるはずだし、古事記に出て来る「天安河原」もあります。
神話ではマテラス大神が天岩戸に隠れてしまった後、どうしたら出て来てもらえるかと、八百万の神々が集まって会議をしたところです。
思兼神が知恵を出し、八百万の神々が協力して解決に導いたというお話で、こちらにある天安河原宮にはその思兼神と八百万の神々が祀ってあります。
私は天岩戸よりも天安河原の方に、異質・異様なパワーが感じられて、とても怖かったのです。
ここを訪れた人が必ず感じるであろう、異様なパワーは、ここが八百万の神のパワーと人間の思念が入り混じる、異空間だからでしょうか。
天安河原への道
ふれあいバス「岩戸」バス停又は「天岩戸神社西本宮駐車場」から徒歩でどうぞ。
西本宮参拝前に県道7号からも行けますし、参拝後に参道を通り抜けた所からも行けます。
「天安河原入口」の看板があるところで、右に下りましょう。
お土産屋さんや小さな飲食店があり、その先は遊歩道になっています。
道はわかりやすく、最初のうちはよくある気持ちの良い、川沿いの遊歩道です。
沢に降りて行くにつれて、樹木と岩肌に囲まれた自然の中に入っていきます。
岩壁を廻りこみ洞窟が見えると、雰囲気は一変。
大きな洞窟の中に鳥居があり、いかにも厳かな景色ですね。
ただ足元にはびっしりと石積みがあって、一見して普通の河原ではないことに気がつきます。
ここが「仰慕ヶ窟」、「天安河原」と言われるところです。
見渡す限りの石積みは、神の領域というより、黄泉の国の入り口とも見まがう景色ではありませんか。
まるで賽の河原。
戦後、神の概念が変わったのか
この石積みは戦後に始まったことで、戦前の写真には写っていないそうです。
戦前に神といえば天皇家につながります。
戦前・戦中は、今のように天皇をTVで見ることはあり得ませんでした。
行幸などでたとえ目の前にいらっしゃっても、頭を下げ目を伏せて、見てはならない存在だったそうです。
(本当に神様と同じ扱いだったんですね)
他でもないアマテラス神話の地で、今のような石積みをすることは、たいへん畏れ多いことだったに違いありません。
戦後、天皇が神ではなくなったと同時に、神自体の概念も変わってしまったのではないでしょうか。
畏れ敬う神から、願い事を聞いてくれる神に。
八百万の神々が祀ってあるので、いろいろな願いが叶うという訳ですね。
天安河原では八百万神に敬意を払う
カジュアルな神様を否定するつもりはないのですよ。
八百万の神というのは、自然のものすべてに神が宿るという考え方から来たものです。
山の神、台所(かまど・くど)の神、トイレ(厠)の神…等、八百万という、無限に近い数の神様がいらっしゃるので、おろそかにしてはいけないということですよね。
銭洗い弁天や宝くじ神社や美人になれる神社などもあるし、それらを願うのは人情です。
そういう神社に行くと、私もお願いします。
その昔から、カジュアルな神様はいろいろな願い事を聞いて下さいました。
それらの神社では、願い事を書いた絵馬も、しかるべく整理されています。
神様のいらっしゃるところは清浄であるべきなので。
でもここはちょっと違うような気がするんですよ。
石積みが始まったばかりの時は、つつましい願い事の石積みだったんでしょうね。
ただここまで増えると、恐怖です。
洞窟の自然が醸し出す雰囲気とは全く異なる、増殖する人工物。
物理的なことより何より、全身の毛が逆立つような気配というか空気というか…。
たくさんの人の念も宿っているのでしょうか。
とは言っても、神様のパワーが人間の念に負ける筈はないのですが。
それでも長く居続けてはいけないのではないかと感じました。
肝が縮んだ出来事
鳥居の奥に、思兼神と八百万神を祀った、小さな天安河原宮があります。
ご挨拶のお参りだけしていこうと、おそるおそる奥に進んで拝礼しました。
悪い気の方を思いきり感じていたので、もう少しだけ生かしておいて下さいとだけお願いすることに。
その時、後ろから誰かに首筋を触られたような感触に、肝が縮みました。
しめ縄を張る柱を注連柱(標柱とも)といいます。
うっかりしてその注連柱の内側に入ってしまい、しめ縄に触れてしまったんです。
(ああ、しめ縄…)と思ったものの肝は縮んだまま、緊張は解けず。
どれだけビビっているんだという話ですが。
祭壇との距離が微妙で、内側に入らないとちょっと遠く、入ると狭く、ちょうど写真の青い服の方のようになりました。
しめ縄は結界を張ってあるという意味なので、中には入らない方が良いんですよね。
こちらの場合は近づき過ぎるようなので、お気をつけて。
大きい神社ではもう少し離れていたりして、くぐっても大丈夫なようですが。
すなはち布刀玉の命、尻久米縄をその御後方に控き度して白さく、「ここより内にな還り入りたまひそ」とまをしき。
新訂古事記付現代語訳 武田祐吉訳注 中村啓信補訂・解説 より
古事記では、アマテラス皇大神を引き出した後、別の神様がしめ縄を後方に引き渡して「入らないで下さい」と言った、とあります。
太鼓橋は結界、良い気は東本宮では
往きにも通った太鼓橋。
「一番強いパワースポット」として有名ですが、往きには何とも思いませんでした。
帰り道には、これまで仰慕ヶ窟のパワーに圧倒されていたので、この辺りがホッとする優しい場所に思えたんです。
ここが外側の結界(しめ縄が既に結界なので)かも。
太鼓橋は俗世と聖域の間にかかる橋と言われますしね。
清流が流れています。
天安河原の後にはぜひ、東本宮の方にも足を運んでみて下さい。
西本宮のご神体である天岩戸はアマテラス大神の依り代であり、本当に鎮座しておられるのは東本宮です。
清涼な良いパワーがいただけると思いますよ。
アクセス
最寄りの空港 阿蘇くまもと空港
公共交通機関 高速バス 特急たかちほ号
阿蘇熊本空港⇒高千穂バスセンター 2時間10分
高千穂町ふれあいバス「岩戸線」
高千穂バスセンター⇒天岩戸神社 15分
車 阿蘇熊本空港⇒高千穂バスセンター 1時間半
天岩戸まで 15分
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