加齢とともに、誰でも身体の機能は低下し、更に高齢になると様々な症状が現れるようになります。
今回はこのうち、フレイルとサルコペニアについてお話しましょう。
これまでは「虚弱」などと言われ、老化現象として見過ごされてきたものです。
老化は避けられないことですが、日頃の運動やライフスタイルによって、個人差は大きくなります。
高齢期はこの、個人差が大きいことも特徴です。
フレイルとサルコペニア
最近こんなことはありませんか?
・以前より歩くのが遅くなった ・疲れやすくなった ・運動をしなくなった ・食べこぼしがある ・むせやすくなった ・掃除や料理などの家事がおっくうになってきた ・ペットボトルのフタが開けられなくなった ・食が細くなってきた ・ダイエットしてないのに、半年で2~3㎏体重が減った
実はこれらは全部、注意が必要な、フレイルの兆候なんです。
フレイルとは、高齢になって筋力や精神面が衰えている状態のことです。
健康と病気の中間的な段階にあり、健康→フレイル→介護状態という順で進んでいくと考えられています。
①体重減少
②歩行速度低下
③握力低下
④疲れやすい
⑤身体活動レベルの低下
この①~⑤までの項目のうち3項目以上当てはまるとフレイルとみなされます。
要支援から要介護状態の広い範囲に見られます。
一方サルコペニアは、加齢に伴う筋肉量の減少を指します。
近年は筋肉量の減少だけでなく、筋力や身体機能の低下までを含めてサルコペニアと言っています。
フレイルの原因の一つとも言えます。
加齢に伴う変化は一方通行で戻れないような印象を持たれがちですね。
でも、フレイルは早期に運動や栄養による対応をすることで、それを食い止め、更には元に戻すことが可能なんです!
あれ?と気づいたことがあったら、意識して改善を目指しましょう。
オーラルフレイルに注意
オーラル(口腔)フレイルは、口の機能低下のことです。
最近では、全身的なフレイルの前段階であるということが言われ始めました。
口から食べ物がこぼれる、うまく呑み込めない、滑舌が悪くなった、むせることが増えた等の軽い衰えを見逃した結果、全身的な機能低下に進むのだそうです。
生活範囲や活動量の減少・低下⇒口腔への関心が薄くなる⇒歯科受診、口腔清掃の悪化・中止
⇩
食べ物をこぼす・噛む力の低下・むせる・滑舌が悪くなる・食欲低下・偏食(柔らかいものしか食べない)ことによる栄養の偏り
⇩
低栄養状態⇒サルコペニア⇒筋力低下⇒活動意欲低下⇒消費エネルギー・食欲低下⇒低栄養状態…
と悪循環になりやすく、重度フレイルになって行ってしまうので、注意が必要です。
オーラルフレイルの予防
・食事の際はしっかり噛んで飲み込むことを意識し、日頃からよく話すこと
・歯科治療や定期的歯科受診をきちんとすること(入れ歯になってからも)
・口腔体操などを行なう
オーラルフレイルについて詳しくは
時々むせる?まだ若いと思ってるうちから|オーラルフレイル予防と対策を読んで下さい
粗食は老化を早める―たんぱく質をしっかり摂って
「トシだから肉はあまりいらない」「若い子のように動かないし」「麺類やお茶漬けの方が食べやすい」といった、高齢者あるあるは見直しましょう。
高齢者の栄養問題に、低栄養があります。
食事量が減ると、まず単純に筋肉を作るためのたんぱく質の摂取不足が考えられます。
さらに摂取した糖質・脂質・たんぱく質等のエネルギーが不足すると、私たちの体は体脂肪や筋肉のたんぱく質をエネルギーとして使うために、筋肉が減少していきます。
間違ったダイエットでよく聞く、アレです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、高齢者でも、たんぱく質の必要量は一般成人と変わらないんですよ。
年齢 | 男 | 女 |
30~49歳 | 65 | 50 |
50~64歳 | 65 | 50 |
65~74歳 | 60 | 50 |
75歳以上 | 60 | 50 |
なので、摂取量不足はサルコペニアの一因となります。
きちんと摂取し、筋肉を作るために適度に運動しましょう。こうすることで良い方の循環になっていきます。
因みに施設では食事管理がされており、介護職員や栄養士が、一人一人の食事摂取量を毎食記録しています。
低栄養リスクの指標は摂取量を75%以下としています。
1食の摂取が2/3以下や、1日に2食程度の摂取が続くことがこれに当たるんですね。
在宅の場合は摂取量の把握がしにくいため、BMI(体重㎏/身長㎡)や体重減少に注意すると良いです。
たんぱく質60gの例
・卵1個 50g……たんぱく質6.1g ・牛乳200㎖……たんぱく質6.9g
・ヨーグルト1個90g……3.2g ・肉 90g……18g
・魚1切れ 80g……16g ・納豆1パック 40g……6.6g
・豆腐1/6丁 50g……3.3g 合計 60.1g
これだけの量、食べてます?
たんぱく質以外にも、主食や野菜等を食べる必要がありますので、「食べるだけで疲れる」という方もいらっしゃいます。
全部食べていただきたいのですが、無理強いはせず長い目で見て、いずれは完食できると良いですね。
腎臓疾患はたんぱく質制限がかかる―生活習慣病は医師と相談
たんぱく質が良いと言っても、例えば腎臓疾患があるとたんぱく質の制限が必要です。
生活習慣病の糖尿病が悪化して糖尿病性腎症になると、たんぱく質は制限され、エネルギー源が減るため、脂質の摂取が増やされます。
糖尿病の時とは食べ方を大幅に変えないといけなくなるので、自己判断ではいけません。
また、糖尿病・高血圧・脂質異常症で血管が傷つくと、心疾患や脳血管疾患のリスクが高くなって、動悸・息切れ等で運動の持続力が低下します。
脳血管疾患を起こすと、麻痺などの後遺症で運動機能低下、嚥下機能の低下、認知機能低下など、これらもフレイルの要因となります。
生活習慣病にならないことが最善ですが、もし治療中であれば、きちんとコントロールしましょう。
社会的要因・複合的な要因
高齢になると、例えば配偶者が亡くなる、友人が亡くなる等で気落ちし、外出が減ることがあります。
・妻を亡くして食事の支度ができない、栄養が偏る
・お金がなくて食事や病院代を節約している
等の要因でもフレイルは起こります。複合的な原因で起こっている場合は、一つ一つひも解いて対応していく必要がありますね。
フレイルの予防のまとめ
●3食しっかり食べ、よく噛み、ちゃんと飲み込む
●たんぱく質の充足
●栄養と運動は生活習慣病のコントロールにもつながる
●社会とのつながりを保つ
フレイルは早期に対応することで食い止め、元に戻すことができます。あきらめずにチャレンジしましょう。
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