まだまだ元気なシニアのみなさん。
たまにムセるようになったなぁ…と自覚することはありませんか?
または、錠剤が飲みにくくなったとか。
ムセ自体は、気管の方に異物が入りそうになると反射的に外へ排出しようとするために起こる、防御反応=正常な作用です。
ただ若い頃は、そんなに頻繁にムセなければいけない状況にはなりませんでしたよね。
「錠剤が飲みにくいなら市販のゼリー状のもので飲めば良いではないの?」
そうですね、本当に困難になったら、それも一つの方法です。
でもまだまだ若いあなたは、まずはお金をかけなくても、シンプルに口周りの筋肉を鍛えることをおすすめ。
老化なんだから仕方がない、とすぐにあきらめて便利グッズに頼るのは、ますます老化を進めます。
体全体のフレイルは良く知られるようになってきましたが、オーラルフレイル(口腔フレイル)はどうでしょうか。
全身の筋力は加齢とともに低下しますが、それは口の周りの筋力についても言えることなのです。
皆さん足腰は気にして多少なりとも鍛えようとされるのですが、オーラルフレイルは足腰より早く、まだまだ全然若いと言われているうちに、すでになっている可能性もあるのです。
問題は、そのままにしておくと全身のフレイルにつながったり、嚥下障害や要介護状態になりかねないということなのです。
介護予防の観点から、今のうちにオーラルフレイルについて、知っておいてもらえたらと思います、
オーラルフレイルとは
口腔機能には噛む・飲み込むといった食の機能や滑舌など話す機能が含まれます。
加齢による口の筋力の低下や歯の喪失等で、その口腔機能が衰えた様子をオーラルフレイルと言います。
高齢になって口腔機能が低下すると、若い時とは異なる場面が見られることがありますね。
舌やのどが思うように動かず、滑舌が悪くなったり、飲み込むのがワンテンポ遅くなってムセやすくなったり。
わずかながらも食べこぼしたり、硬いものが噛みにくくなったりもします。
硬いものが食べにくくなると、どうしても柔らかいものばかり選んで食べるようになるので、噛む力がさらに低下して噛める食材がますます減ってしまい、栄養に偏りが起こり…と、良くない循環に陥りがちです。
そうして全身の筋力低下にもつながってしまうかもしれないのです。
オーラルフレイルはまだ病気の段階ではありませんが、検査の結果、口腔機能低下症とされると疾患名になります。
食べ物が口に残るようになった、錠剤が飲み込みにくい、食事に時間がかかるようになった、と気づいたら、歯科受診をおすすめします。
境目の区別がつきにくいのですが、軽い衰えで抑えることは可能なので、早い段階で適切な対策が取れるよう、本人や周りの気づきが大切です。
嚥下障害とは
オーラルフレイルの段階では嚥下障害とは言いません。
順番を示すならオーラルフレイル→口腔機能低下症→咀嚼障害や摂食嚥下障害と進む感じです。
嚥下とは水や食べ物を飲み込み、食道から胃へ送り込む動作のことです。
この機能がうまく働かないのが嚥下障害で、飲み込んだ後に誤って肺へ入ってしまったり、のどにつかえたままになったりという、誤嚥(誤飲とも)を起こします。
嚥下障害の原因は加齢だけではなく、疾患や心理的要因によるものもあり、器質的原因・機能的原因・心理的原因と分けられます。
加齢による筋力低下が原因のものは機能的原因になります。
ムセが多くなるのは機能低下がおきているためなので要注意事項ですが、もっと嚥下障害が進むと反射機能も低下するので、むしろムセなくなってくるのです。
こちらの方がもっと危険。
高齢者や体力が弱っている人の場合、異物をしっかり排出できず、食べ物が肺の中に蓄積して誤嚥性肺炎になりやすく、命にかかわることがあります。
のどに異物が残った感じ、ガラガラ声になってきた、夜咳が出て目が覚める、38度近くの発熱がある、等の場合は誤嚥の可能性があります。
自分で状態が言えなくなっている要介護者の方の発熱には、十分注意してください。
オーラルフレイルの予防
嚥下障害にはなりたくないですね。
それではまず、オーラルフレイルにならないように気を付けましょう。
●口腔内を清潔にし、自分の歯を極力なくさないこと
平成元年に「8020運動」が提唱され、80歳で20本以上自分の歯を保とうという意識はずいぶん浸透して来ました。
高齢になると社会的なつながりが薄くなり、人と話す機会が減ることがあります。
そのことで口腔への関心が薄れたり、加齢により唾液が出にくくなって細菌の繁殖が起きやすいので、虫歯や歯周病には要注意です。
歯を失うと物が食べにくいだけではなく、どうしても口の筋力は衰えます。
意識して口腔内を清潔に保ち、歯をなくさないよう毎日の小さな努力が大切です。
歯石除去等で定期的な歯科受診をし、8020を達成・維持しましょう。
●食事の時は「噛む・飲み込む」ことをしっかり意識する
なるべく食事に集中して、しっかり味わいましょう。
あまりに硬いものを噛む必要はありませんが、なるべく歯ごたえのある食材を選び、しっかり噛んで飲み込むことを意識しましょう。
自分がしっかり噛むことができているか、時々確認すると良いです。
●日頃からよく話し、声を出す
孤独にならず人と会話をすることが望ましいです。カラオケで歌うなども良いですね。
●口腔体操をする
口を開閉したり、舌を上下左右に動かしたりする口の体操です。
高齢者施設では大抵首の運動から始めます。
咀嚼・嚥下に必要な筋肉は口周りだけではないからです。
それから口の開閉・舌を出したり引っ込めたりといった口周りの筋肉を動かします。
有名なのは「パタカラ体操」。
「パパパパ…」「タタタタ…」「カカカカ…」「ララララ…」「パタカラ、パタカラ…」と繰り返し発音するもので、それぞれ異なる筋肉が使われます。
回数は適当でOKですが、食前に行なうのが効果的。
筋肉をほぐし、唾液の分泌も促されます。
「口腔体操」「嚥下体操」で検索すると、たくさん出てくるので、どれでも良いからやってみてください。
普段あまり使えていない筋肉を動かすと、気持ち良いですよ。
表情筋を動かすことにもなるので、新米シニアとしてはほうれい線の解消(軽減)にも良いのが嬉しいところ。
オーラルフレイルの対策
現在の自分の状態がオーラルフレイルに当たると認識することが第一歩です。
オーラルフレイルの予防で書いたことが、そのまま対策にもなるので、ぜひ継続してください。
一言ずつ付け加えるなら、
●歯科治療をきちんと行ない、定期的な診療を受ける
やむなく入れ歯になったとしても、残存歯の維持や入れ歯の具合を見るためにも定期受診をしましょう。
引き続き歯や口の中の健康状態を診てもらい、進行を防ぐ効果があります。
口腔内の清潔を保つことは必須。
●噛む・飲み込むことを意識し、必要な栄養をきちんと摂る
栄養だけを考えれば今時はサプリメントという手もありますが、オーラルフレイルの場合は筋力回復が望ましいです。
オーラルフレイルが進んだ段階では錠剤も飲みにくい、ということもありえますし。
筋力回復のためには、その時点での機能にあった食事の形態を考え、咀嚼機能や嚥下機能の改善を目指しましょう。
まだ十分噛めるなら、ゴボウ・タケノコ・レンコン・スルメイカ等、歯ごたえのある食材を積極的に摂るようにしたいものです。
噛みにくければ、繊維を断つ切り方にする、かくし包丁を入れるなど、調理方法を少し工夫すれば、柔らかい食材ばかり選ばずに済みます。
イカやタコ、厚みのある肉などは細かい切り込みを入れると嚙み切りやすくなりますよ。
肉・魚などのたんぱく質はもちろん、カルシウム・マグネシウム・亜鉛といったミネラルも忘れずに。
●家族や友人とよく会話をする、声を出す
積極的に口を動かしたり声を出すことが大切なのです。
例えば独居の方なら、アナウンサーのように早口言葉を言ってみる、芸人さんになったつもりでTV相手に「なんでやねん」と突っ込んでみる、でも良いと思います。
●口腔体操
「パタカラ体操」は無理なく筋肉を鍛え、飲み込む力もついて良いです。
唾液腺のマッサージは唾液が出やすくなり口の中の乾燥を防ぎますし、食べ物をまとめやすく飲み込みやすくもなります。
歯磨き時にブクブクうがい、ガラガラうがいを加えると、これも口腔体操の一つになります。
摂食機能障害にまでなってしまうともはや機能回復は期待できません。
その場合でも機能に合った食事形態や食品への変更で、食べることや栄養を摂ることは可能ですが、食べる楽しみはほぼなくなるといって良いでしょう。
ぜひそんなことにならないように、今のうちにぜひ予防と対策をお願いしますね。
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